CROWNⅡ Reading2
クラウンⅡ reading2
Hearts and Hands
デンバーで大勢の旅行者が東に向かう急行列車に乗り込んできた。車両の一つにきれいな服を着た若くてとてもかわいい女の子が座っていた。彼女は裕福らしい物腰をしていて、旅慣れた旅行者であるように見えた。たった今乗り込んできた乗客の中に二人の男がいた。一人は若くてハンサムでいい服を着た、強い個性の持ち主と見えた。もう一人はもう少し年配で、悲しそうな顔つきとがっちりした体型をしていて、かなりみすぼらしい服を着ていた。二人は互いに手錠でつながれていた。
二人が車両を通り抜けてみると、残されていた席はあの若くてかわいい女の子の向かいだけだった。二人はそこに座った。若い女の子は一瞬、何気ない様子で彼らのほうを見た。すると彼女の顔が愛らしい笑顔でぱっと輝いた。彼女は小さな手を差し出した。その張りのある甘い声から、話しをするとき相手が自分に注意を向けることを期待しているのは明らかだった。
「あの、イーストンさん。私にどうしても先にしゃべらせたいならそうしなくてはならないかしら。あなたは西部で昔の友達に会ったら思い出せないの?」
若い方の男は彼女の声に驚いて顔を上げた。最初のうち彼は誰かが自分を知っていることに不安を覚えたようだったが、左手で彼女の手を取った。
「フェアチャイルドさん。」彼は微笑んで言った。「左手でごめん。あの、今、右手がふさがっていて。」
彼は右手を少し持ち上げて見せた。右手はもう一人の男の左手と光る手錠でつながれていた。若い女性の目に浮かぶうれしそうな様子が徐々に不信と恐怖に変わった。彼女はぽかんとしてしゃべれなかった。イーストンは少し笑って何か言おうとした。けれどちょうどそのときもう一人の男が彼を制した。悲しそうな顔をした男はさっきから女の子の顔を注意深く見つめていた。
「割り込んですまんが、あなたはこの保安官とお知り合いのようですね。刑務所に着いたら私を弁護をしてくれるようこの保安官に頼んでくれませんかね。そしたらいろいろと楽になるかもしれないので。私は彼にレブンワースに連行されるところなんですよ。通貨偽造で懲役7年でしてね。」
「まあ。」女の子は言った。顔色が戻ってきた。「ここまで来てそういう仕事をしていたのね。保安官だなんて!」
「フェアチャイルドさん。」イーストンが言った。「何かをしなくてはならなかった。お金を貯めておくっていうのは難しいこともあって、ワシントンで仲間に遅れずにやっていくにはお金が必要なんだよ。西部でこの仕事の空きを見つけてさ、まあ、保安官は外交官みたいに地位は高くはないんだけど、でも…」
「あの外交官なら。」女の子がやさしく言った。「もう連絡してこないわ。そんな必要も全然なかったのよ。それはあなたが知っているでしょう。今、あなたは西部の有名な保安官になっていて、馬にまたがって銃を撃ってありとあらゆる危険に飛び込んでいるの。ワシントンの生活とは別物ね。昔の仲間たちもあなたがいなくて寂しがっているわ。」
女の子の視線がまた興味深げに光る手錠へと注がれた。
「これのことなら心配いりません。」もう一人の男が言った。「保安官はみな犯人を逃がさないよう手錠をかけるんですよ。イーストンさんは自分の仕事を知っておられる。」
「また近いうちにワシントンで会えないかしら?」女の子が聞いた。
「すぐには無理だと思う。」イーストンが言った。「遊んでいられる時代はもう終わってしまったようだ。」
「西部は大好き。」窓の外を見ながら女の子が言った。彼女の目は優しく輝いていた。あの東部の富裕層の物腰もなく彼女は素直に無邪気に話し始めた。「私、ママとデンバーで夏を過ごしたの。ママはお父さんが病気だからって一週間前に家に帰っちゃった。私は西部で幸せに暮らしていけるんじゃないかな。ここの空気は私に合っていると思うの。お金がすべてじゃない。でも人はいつも勘違いしてずっと愚かなまま…」
「ねえ、マーシャルさん。」悲しそうな顔をした男が言った。「こんなのありですかね。私はのどが渇いたし今日はまだ全然たばこ吸ってない。もう十分話したでしょ。私を喫煙車まで連れて行って下さいよ。たばこが吸いたくてしょうがない。」
二人の繋がった旅行者は立ち上がった。イーストンは相変わらず微笑んでいた。
「彼がたばこ吸いたいと言ったらダメとは言えないな。」彼が言った。「たばこが彼のほとんど唯一の友達だからね。じゃあね、フェアチャイルドさん。これも外せない仕事なんだよ。」彼は別れを告げるために手を差し伸べた。
「あなたが東部に行かないなんてとても残念だわ。」彼女が言った。その声はいつもの話し方に戻っていた。「でもレブンワースまで行かなくてはいけないのよね。」
「ああ。」イーストンが言った。「僕はレブンワースまで行かなくてはいけない。」
二人の男は喫煙車に向かって車両を通っていった。
近くの席に座っていた他の二人の乗客が会話をほとんどを聞いていた。そのうちの一人が言った。「あの保安官はいい男だな。西部にはああいうできた奴もいる。」
「保安官にしちゃずいぶん若くないか?」もう一人が聞いた。「若い?」最初の男が言った。「何で…、そうか、分かってないんだな。あれだ、君は保安官が手錠で犯人を自分の右手につなぐのなんて見たことがあるか?」/
